2013年10月25日
嘉徳 シマ(集落)めぐり
奄美大島本島にある瀬戸内町の集落を一つひとつめぐり、
集落空間がどう作られているのか
また集落の地名や山・川・泉などの方言名、
昔話などを聞き取り調査をすすめています。
9月26日(木)に
嘉徳(かとく)集落にうかがいました。

嘉徳は、島での呼び名・方言名は「カドホ」。
瀬戸内町の山郷(やまぐん)と呼ばれる
山深いエリアにある集落。
奄美市名瀬から国道58号線を南下し、
瀬戸内町の古仁屋へ向かう網野子峠の途中から町道へ下り、
さらに5キロほど行った先にあります。
背後には、豊かな山々と、
そこから湧き出る清流・嘉徳川。
また護岸がなく、
アダンが並ぶ昔ながらの海岸は、波もよくサーファーにも人気。
豊かな自然と、
どこか神秘的な雰囲気に魅せられる人も多い集落です。

嘉徳には、シマ唄の『嘉徳なべ加那節』に歌われ、
実在したと言われる人物「なべ加那」の墓が、
海岸近くの墓地にあります。

なべ加那は、高貴な女性とも、親不孝者とも諸説あり
その実像ははっきりしませんが、
抑揚の激しい難曲ながら、、
美しいメロディで多くの人々から愛されている1曲です。
また、現在、藍染め工房のある付近は、
縄文後期時代の遺物が昭和48年に発見された「嘉徳遺跡」もあります。

嘉徳区長の徳田博也さん(昭和25年生まれ))に
案内をしていただきました。

嘉徳集落は、
世帯数15世帯、人口26名(平成25年9月末現在)。
人口がかなり少なくなったため、
豊年祭・敬老会などの行事も現在では行われておらず、
昔話をできる高齢者も非常に少なくなっています。
今回は、昭和3年生まれの、
T・Hさん(女性)に聞き取り調査。
・ 昔の暮らしの様子
・ 集落内の川や橋などの方言での呼び名
・ 炭焼き小屋や、マシュ炊き(塩炊き)小屋について
・ ソテツ味噌作り、下駄づくり、わらじづくり
・ 昔の生活道具の使い方、作っていた人、
・ 漁業、林業の様子
などなどを教えていただきました。
ここは、昔の海岸へ行く道。

海岸の左側にある山は、「カミヤマ」、
その下あたりは「オホチ」と呼ばれ、集落にとって神聖な場所となっています。
また山の上から見張って合図をし、追い込み漁もしていました。
特に嘉徳のウルメは珍しくて有名だったそう。
※ウルメとは、赤ウルメ(タカサゴ)、青ウルメ(ムロアジ)

また海岸そばにも、もう1ヶ所「カミヤマ」と呼ばれる場所があり、
こちらも神聖な場所として、
区長さんは立ち入らないそうです。

バス停がある付近には、
昔、ミャー(広場)があり、
ここに浜から砂を持ってきて土俵を作って豊年祭をやっていました。

平成16年度(2004年度)に休校となった嘉徳小学校。
現在は、画家の堀 晃さん(ほり・ひかる)さんが
創作空間「ムンユスィ館」として
アトリエ&ギャラリーとして利用しています。
校庭には立派なアカギの木が、見事な木陰を作っています。
ここでお弁当を広げるのは最高ですね。

また校庭の片隅には、炭焼小屋が。
かつて嘉徳では、生業として炭焼きが盛んに行われており、
古仁屋の森林組合や、喜界島にも販売されていたとか。

学校裏に流れる川は「ウッコンコ」と呼ばれ、
その上流の田喜(たき)では、集落の人々が飲み水を汲んでいました。
川の下流は、洗濯場として利用。

田んぼ跡。集落には、田んぼも数多くありました。

徳田区長が所有していた、
昔の嘉徳集落の写真。

年代が分からないそうですが、嘉徳小学校が鉄筋校舎。
落成記念に撮ったものでしょうか。
茅葺きとトタンの屋根が混在しています。
もしこの写真の年代をご存知のかた、教えてください。
* *
集落入口近くの携帯電話の電波塔のあたりには、
昔、製材所とサタゴヤ(製糖小屋)があったそうです。
ユニークだったのは、集落入口から3つある橋の呼び名。
国道58号線に一番近い、川内橋が「フウゴッチ」
その次の、嘉徳橋が「ワタッチ」

リュウキュウアユもまだいるのでしょうか?
昔はよくハアガン・ウレガンと呼ばれる蟹を取りに来ていたと、
徳田区長さん。
藍染めのよしかわ工房前にある金久橋が「ソーメンティミ」。

素麺と、ティミは爪?のことでしょうか?
それぞれの名前の由来ははっきりしませんでしたが、
集落ならではの呼び方があるのは、財産ですね。
また嘉徳集落内は24もの小字があり、
シマでよく聞く小字の金久(かねく)、中里(なかざと)だけでなく、
前辺蛇(まえへじゃ)、大辺蛇(おおへじゃ)などから、
嘉徳の隣、住用村にある青久(あおく)と同じ名前の小字・青久、
節子道(せっこどう)もあります。
興味深いですね。

このように、3月まで
奄美大島本島にある瀬戸内町の集落をめぐり、
集落にまつわるさまざまなことを聞き取り調査していきます。
その活動の様子を
こちらのブログで報告していきます。
みなさんのシマ情報もお待ちしておりますので、
今後ともよろしくお願いいたします。
調査日 : 2013年9月26日(木) 晴れ
調査場所 : 奄美大島 瀬戸内町 嘉徳集落 ( 鹿児島県大島郡瀬戸内町嘉徳 )
奄美.asia 調査員 / Y・K
集落空間がどう作られているのか
また集落の地名や山・川・泉などの方言名、
昔話などを聞き取り調査をすすめています。
9月26日(木)に
嘉徳(かとく)集落にうかがいました。

嘉徳は、島での呼び名・方言名は「カドホ」。
瀬戸内町の山郷(やまぐん)と呼ばれる
山深いエリアにある集落。
奄美市名瀬から国道58号線を南下し、
瀬戸内町の古仁屋へ向かう網野子峠の途中から町道へ下り、
さらに5キロほど行った先にあります。
背後には、豊かな山々と、
そこから湧き出る清流・嘉徳川。
また護岸がなく、
アダンが並ぶ昔ながらの海岸は、波もよくサーファーにも人気。
豊かな自然と、
どこか神秘的な雰囲気に魅せられる人も多い集落です。

嘉徳には、シマ唄の『嘉徳なべ加那節』に歌われ、
実在したと言われる人物「なべ加那」の墓が、
海岸近くの墓地にあります。

なべ加那は、高貴な女性とも、親不孝者とも諸説あり
その実像ははっきりしませんが、
抑揚の激しい難曲ながら、、
美しいメロディで多くの人々から愛されている1曲です。
また、現在、藍染め工房のある付近は、
縄文後期時代の遺物が昭和48年に発見された「嘉徳遺跡」もあります。
嘉徳区長の徳田博也さん(昭和25年生まれ))に
案内をしていただきました。

嘉徳集落は、
世帯数15世帯、人口26名(平成25年9月末現在)。
人口がかなり少なくなったため、
豊年祭・敬老会などの行事も現在では行われておらず、
昔話をできる高齢者も非常に少なくなっています。
今回は、昭和3年生まれの、
T・Hさん(女性)に聞き取り調査。
・ 昔の暮らしの様子
・ 集落内の川や橋などの方言での呼び名
・ 炭焼き小屋や、マシュ炊き(塩炊き)小屋について
・ ソテツ味噌作り、下駄づくり、わらじづくり
・ 昔の生活道具の使い方、作っていた人、
・ 漁業、林業の様子
などなどを教えていただきました。
ここは、昔の海岸へ行く道。

海岸の左側にある山は、「カミヤマ」、
その下あたりは「オホチ」と呼ばれ、集落にとって神聖な場所となっています。
また山の上から見張って合図をし、追い込み漁もしていました。
特に嘉徳のウルメは珍しくて有名だったそう。
※ウルメとは、赤ウルメ(タカサゴ)、青ウルメ(ムロアジ)

また海岸そばにも、もう1ヶ所「カミヤマ」と呼ばれる場所があり、
こちらも神聖な場所として、
区長さんは立ち入らないそうです。

バス停がある付近には、
昔、ミャー(広場)があり、
ここに浜から砂を持ってきて土俵を作って豊年祭をやっていました。

平成16年度(2004年度)に休校となった嘉徳小学校。
現在は、画家の堀 晃さん(ほり・ひかる)さんが
創作空間「ムンユスィ館」として
アトリエ&ギャラリーとして利用しています。
校庭には立派なアカギの木が、見事な木陰を作っています。
ここでお弁当を広げるのは最高ですね。

また校庭の片隅には、炭焼小屋が。
かつて嘉徳では、生業として炭焼きが盛んに行われており、
古仁屋の森林組合や、喜界島にも販売されていたとか。

学校裏に流れる川は「ウッコンコ」と呼ばれ、
その上流の田喜(たき)では、集落の人々が飲み水を汲んでいました。
川の下流は、洗濯場として利用。

田んぼ跡。集落には、田んぼも数多くありました。

徳田区長が所有していた、
昔の嘉徳集落の写真。

年代が分からないそうですが、嘉徳小学校が鉄筋校舎。
落成記念に撮ったものでしょうか。
茅葺きとトタンの屋根が混在しています。
もしこの写真の年代をご存知のかた、教えてください。
* *
集落入口近くの携帯電話の電波塔のあたりには、
昔、製材所とサタゴヤ(製糖小屋)があったそうです。
ユニークだったのは、集落入口から3つある橋の呼び名。
国道58号線に一番近い、川内橋が「フウゴッチ」
その次の、嘉徳橋が「ワタッチ」

リュウキュウアユもまだいるのでしょうか?
昔はよくハアガン・ウレガンと呼ばれる蟹を取りに来ていたと、
徳田区長さん。
藍染めのよしかわ工房前にある金久橋が「ソーメンティミ」。

素麺と、ティミは爪?のことでしょうか?
それぞれの名前の由来ははっきりしませんでしたが、
集落ならではの呼び方があるのは、財産ですね。
また嘉徳集落内は24もの小字があり、
シマでよく聞く小字の金久(かねく)、中里(なかざと)だけでなく、
前辺蛇(まえへじゃ)、大辺蛇(おおへじゃ)などから、
嘉徳の隣、住用村にある青久(あおく)と同じ名前の小字・青久、
節子道(せっこどう)もあります。
興味深いですね。

このように、3月まで
奄美大島本島にある瀬戸内町の集落をめぐり、
集落にまつわるさまざまなことを聞き取り調査していきます。
その活動の様子を
こちらのブログで報告していきます。
みなさんのシマ情報もお待ちしておりますので、
今後ともよろしくお願いいたします。
調査日 : 2013年9月26日(木) 晴れ
調査場所 : 奄美大島 瀬戸内町 嘉徳集落 ( 鹿児島県大島郡瀬戸内町嘉徳 )
奄美.asia 調査員 / Y・K